ねえ、貴方の瞳に私は写っているの?

貴方の唇は私を呼んでくれるの?

貴方の腕は私を必要としているの?



ねえ、貴方の心は私を想ってくれるの?



  私の想いに応えてくれるの?



貴方がいなければ駄目なのに。

  貴方は私から離れていく。



  波紋



ひらり、ひらり。

鮮やかな紅葉が舞う。

池に落ちたそれは、静かに波紋を広げる。


 

「え・・・うそ・・・・・・」

びっくりした。

急に遠くへ行ってしまったようで。

硬直した体を必死に動かす。

咄嗟に笑顔をつくって言葉を紡ぐ。

「じゃあ、これからは『隊長』って呼ぶのかぁ・・・頑張ってね!」

私には『隊長』など遠い世界。

届かなくて、届かなくて、手を伸ばして、それでも届かなくて。

 
心の中では、『日番谷くん』って呼んでもいい?






冬特有の冷たい風が吹き荒ぶ。

彼が隊長になってから一月が経った。

遠くて、もどかしくて、話すことすら出来ない日々。

今日の指令は虚退治だ。

最近失敗ばかりだし、藍染隊長にも心配されてしまった。

「しっかりしなくちゃ・・・。」

そのとき、伝令神機が鳴った。

私は、想いを断ち切るように、走り出した。



 
伝令神機が示したのは、さびれた神社だった。

虚が見つからず、境内を歩いていると、ヒュッという音がした。

刹那、右腕に痛みが走る。

見ると、袖が切れて血が滴っている。

敵の攻撃・・・!

感覚を研ぎ澄ませ、敵の位置を探る。

探り当てた場所に刀を振るう。

刀は空を掻き、僅かに体勢を崩す。

疾い!!

体勢を立て直していると、体が宙に浮く。

虚の触手が私を捕らえていた。

さらに、御神木に叩きつけられる。

「ぅあっ・・・・」

衝撃に呻くと、そのまま縛り付けられた。

なんとか抜け出そうとするが、段々息苦しくなっていく。

朦朧とする意識の中で、ふと考える。

「こんなとき、日番谷くんならどうするかなぁ・・・」




「ばぁーか、そんなヘマしねぇよ」




え?


私が戸惑っていると、虚空を斬る音がした。



ザンッ



さらさらと、ちりが流れていく。

彼の一太刀で、虚は跡形もなく消えた。

「怪我ないか?」

「あ・・・大丈夫。」

何故、彼が、此処に。

表情に出ていたのか、彼は答えた。

「指令の帰りだ。そういえばお前も指令だったな、と思って。」

お前、そそっかしいから見に来たんだよ、と彼は付け足す。

そっかぁ・・・・・あれ?

「なんで私が仕事だって知ってるの?」

しまった、というように彼は顔をしかめる。

「お前と予定が合う日を探してたんだよ。今度どこか連れてってやろうか、って・・・どうしたんだ?」

私は無意識に泣いていた。

痛いのではなく、悲しいのでもなく、ただ嬉しかった。

彼が、『隊長』など関係なく、側に居てくれたことが。

「一月も会えなくて、寂しかった・・・」

「だから、今度出かけよう、って言ってるだろ」

そういって彼は苦笑する。



 
波紋はやがて消え、落ち葉は、池に新たな彩りを添えた。




 










アトガキ

サンタさん、今年のクリスマスには、私に文才を下さい(泣

えー、日番谷が隊長になったときのお話です。

どうやら隊長ってのは、桁外れに強いらしいので、親しい人が隊長になるってのは、どうなんかなー、と思って。

恋する女の子の切ない気持ちが、少しでも表現できればいいなー、と思って書いた作品です。

自分にそんな経験無いのに、どうやって書くんだ、っつー話ですが。

・・・いいんじゃない、想像で(ぉぃ






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