むっとする匂い

若葉の匂い

雨の・・・・・匂い



以心伝心



傘が、無い。

梅雨時なのに傘を忘れるなんて。

うさぎの折りたたみ傘を入れたと思っていたのに。

困ったな。帰れぬではないか。


一護に入れてもらうわけにはいかぬ。

噂になって目立つといけないといけないと言われたし。

それに・・・・・いつまでも世話になるわけにはいかぬのだ。


でも。


きっと私が濡れながら帰るのを見たら

お前は傘に入れてくれるのだろう?

きっと私がずぶぬれで帰ってきたら

お前は心配するのだろう?

お前のそんな顔は見たくないのだ。


ならば私は嘘をつかねばならぬ、と思う。

一護に会ってしまったら、の話だが。

そうだ、皆がいなくなるまで教室で待って

それから浦原の所に寄って帰ろう。

それが良さそうだ。


また笑われるのだろうな・・・・・。

とりあえず教室に戻るか。



あーあ・・・・・・・



どんっ



「おっ、わりぃ。」

「一護!!」

「なんだよ、そんな驚いた顔して。」

あたり前だろう。

お前があらわれるなんて思ってもみなくて。

言い訳を組み立てては崩してを繰り返していたところだというのに。

「っていうかお前帰ったんじゃなかったのか。」

顔に出さないように。

心配されないように。

「きょ、今日はちょっと用事があってだな。」

そしたらきっと「ふーん。」と言って、帰ってくれる・・・。

「お前傘持ってんのか。」

な、なんだこの流れを無視した会話は!?

「私の話を聞いておったのか!?

 今日は用事があると・・・用事が・・・・・。」

「ほら図星だろ。わかってるんだって。

 ったくどうしてそう意地はるんだよ。」


バレバレだったか。

一護はいつもそうだ。

私の言いたいことなど

私の思いなど

わかってしまって

でも

自分の弱味は決して見せない。


お前は優しすぎる。

優しすぎるよ?


いつまで一緒にいられるかわからなくても

私はいつまでもお前のそばにいたいと願うよ。

今一緒にいられるこの時間を

私は大切にしたいと願うよ。



「ほら、早く帰るぞ。」

「あぁ、今行く。」

ちょっと赤い顔を

そして嬉しさを隠しながら。



とぎれることのない   濡れた道


一緒に帰ろう。


そうさ   同じ空の下


私とお前と   以心伝心


・・・願わくば。









thema music:Orange Range 「以心電信」





アトガキ

全ての季節を書きたいので、とりあえず「夏」ですね。

何でこんなに季節ハズレなんでしょう?



white with 知風