『まもなく、本機はナリタ空港に到着致します。現地の気温は摂氏32度・・・』
「うっわ!日本ってやっぱ暑いんだなー!」
「そう?普通じゃない?」
「バーカ。俺ん家の標高約3700メートルだぜ?くじら島とは違うんだよ!」
「あ、そっか。レオリオは?どんな感じ?」
「俺の故郷は港町だからな、暑いのには慣れっこだぜ!」
「ふーん・・・クラピカは?」
「・・・暑い」
「大丈夫?顔真っ赤だよ?」
「ルクソ地方は標高が高いから夏でも20度以上には滅多にならないのだよ・・・」
「つーか何で長袖着てるんだよ!半袖着て来いよ!」
「・・・作者が肌を露出させた私や日焼けをした私を好んで書くと思うか?」
「「「お、思わない・・・」」」
carnival (in Japan)
きっかけは、ハンゾーからの一通のメールだった。
『よぉ。もう8月だな!
俺の故郷ではみんな夏祭りに向けて色々準備してるんだぜ。
そこでだ。日本に夏祭りを見に来ないか?
もちろん4人でいいぜ。
空港までは迎えに行ってやるから安心しろ。日にちは────』
という訳でゴン、キルア、クラピカ、レオリオの4人ははるばる日本までやって来たのだった。
入国手続きを終えると、ハンゾーが待ち構えていた。
「待ちくたびれちまったぜ!久しぶりだな!」
「久しぶり!ハンゾーさん!」
「それにしてもみんな暑くねーか?よくそんな服でいられるな・・・
特にクラピカ!なんでお前長袖にクソ暑苦しそうな上着着てるんだよ!」
「これには深ーい訳が・・・はははははー」
「やっぱ作者の趣味だな」
「ああ」
「それはそうとハンゾー、その服こそかなりの時代錯誤ではないか?」
「うっ!五月蠅いっ!この服は忍びの伝統衣装なんだぞっ!
そういうお前だって相当変な服着てるじゃねーか!」
「神聖な民族衣装を変だと────!?」
「はいはいはい」
キルアが2人の間に入る。
「そんなこと気にすんなよ。この漫画のキャラなんかほとんど怪しー服着てるんだぜ?」
「ま、まぁそうだな」
「やけに納得出来るな・・・」
「な?だからもういいだろ。
それよりハゲのおっさん、早く夏祭りに連れてってくれよ」
「あぁ(ムカ)、早く行きたい所なんだが・・・忍びの里はここからかなり遠いんだ。
長距離バスに乗って行かなければいけない」
「かなりってどれ位?」
「5時間位だ」
「はぁ!?そんなの聞いてねーよ!」
「ほら、やっぱ忍びの里って『人里離れた山奥の〜』って感じだろ?
文句なら俺の先祖に言ってくれよ」
「まぁいい。早くバスに乗らないか?今から5時間後には丁度日も暮れる頃だ」
「そうだな。おいハンゾー、バス乗り場ってどこだ?」
「あっちだ。急ぐぜ─────」
約5時間後。
「あー、首痛い」
「本当に山の中なんだな・・・」
「でも綺麗な所じゃねーか」
「じゃ、早速夏祭りにれっつごぉ・・・」
「おいおい、まだ早いぜ!折角日本の祭を見に来たんだ、それなりの服に着替えないとな!」
「でもそんな服持ってないよ・・・?」
「俺の友達に呉服屋がいてな、今日だけ好きなもん貸してくれるんだとさ」
「「「ゴフク・・・?」」」
「詰まる所、浴衣だな」
「「「ユカタ・・・?」」」
「浴衣とは、日本古来の着物だ。主に夏季に着る、木綿で出来た単衣のことなのだよ」
「カキ・・・?」
「モメン・・・?」
「ヒトエ・・・?」
「あー!とにかく着てみろ!」
ハンゾーは4人を呉服屋に押し込んで、自分も着替えるべく家に向かった。
「うわー、この中から好きなの選んでいいんだねー」
「ゴン、そっち女性用って書いてあるぞ。俺らのはこっち」
「あ、そっか。うわ、男性用って地味だねー」
「こんなもんだって」
一方。
「見つかったか?」
「まだだ。お前はどうだ?」
「俺はこれにしようと思ってる。どうだ?」
レオリオは、紺のかすりの着流しを着ている。
「・・・意外と似合うな」
「だろ?あ、そうだ、お前に似合う浴衣見つけてやるよ!」
と言ってレオリオが向かったのはしっかり『女性用』と書かれているコーナー。
「おっ、おいっ!そっちは違うだろうっ!」
と言う間にみるみる集まる女物の浴衣。
「試着してこいっ!!!」
レオリオは浴衣と共にクラピカを試着室に放り込んだ。
試着室には女性従業員がスタンバイ。
「どちらを試着なされますか?」
「い、いやぁ・・・遠慮しておく」
「こちらなどいかがですか?」
にっこり笑いながら示されたものは紺地に花が抜いてある浴衣。
「あ、あぁ・・・」
「あ、こちらもお似合いですよ!」
手にあるのは浅黄色の華やかな浴衣。
妙に楽しそうな従業員は次々にクラピカに浴衣を合わせてはその辺に投げ捨てていく。
「あ"────!」
30分後。
「クラピカまだかなぁ・・・」
「さっき悲鳴上げてたけど・・・」
「うん!これが一番似合いますよ!きゃー可愛いっ!」
従業員のきゃぴきゃぴした声が聞こえる。
「クラピカー、出て来てよー」
「嫌だっ」
「開けるぜ」
「おっ、おいっ!私の意思は!」
「トーゼン無視」
といいながらキルアはシャッと音を立ててカーテンを開けた。
「・・・///(怒)」
「「お─────」」
「似合うね、クラピカ」
「へー。綺麗じゃん」
深い蒼に小さな白い蝶の柄の浴衣を完璧に着こなしたクラピカがそこにいた。
「・・・これは女性用だ」
「いーじゃん、似合ってるんだから」
「そうだよ、誰が見ても女の人にしか見えないよ!(ニコv)」
「おい・・・今ちゃっかりすげーこと言ったよな?」
「え?そう?」
「つー訳でクラピカはそのまま夏祭りに行けよ」
「何故だ!これは女性用だと言っているだろう!」
「女性用だからいいんじゃん」
「何を言って───」
「見ろよ。おっさん鼻血出してブッ倒れてるんだぜ」
クラピカが下を見ると、確かに鼻血を出してブッ倒れているレオリオがいる。
「げ」
「今更気付いたのかよ。だからー、そのカッコでいればレオリオと恋人同士に見えなくもないかなーみたいな」
「なっ!五月蠅いっ!そんな必要は全くないのだよ!」
「でも満更でもないだろ」
「・・・っう・・・」
「だからさ、そのまま行けよ!」
「うん!クラピカそんなに綺麗なのに着替えちゃうのもったいないよ!」
「・・・ちょっと主旨ちがうけどゴンも言ってるし」
「・・・もういい!何でもいいだろう!」
キルア、密かにガッツポーズ。
「おーい、着替え終わったかー?」
ハンゾーが店に入ってきた。
「──ってそのカッコ何だよ!クラピカ、それ女物だぜ!」
ぐははははーとハンゾーが笑う。
「ま、似合うからいいか。
ゴンとキルアは───ほう、色違いにしたのか」
「うん。俺が黄緑でキルアが水色」
「よく似合ってるぜ」
「ハゲのおっさんのはハデだよなー」
「ん(ムカッ)?あー、俺は神輿担ぐからなー。日本男児はやっぱりはっぴだろ!」
「ふーん・・・」
「そういやレオリオは?何処なんだ?」
「あー、おっさんはちょっと、ね」
「うん。鼻血出して休んでる」
またもやハンゾーはぐははははーと笑った。
「どうせアレだろ、クラピカ見てブッ倒れたんだろ」
「すごーい、何でわかったの?」
「この伊賀の暴れ〇坊将軍と呼ばれた俺にはレオリオの気持ちはよーくわかるぜ!」
「それどういう意味だよっ」
「こーいう意味だ」
「何だよそれ」
「ま、キルアなら意味わかってるだろ?」
「ま、まーな」
「何?俺わかんないよ?教えて!」
「子供は知らなくていいこと」
「自分だって子供のくせに」
キルアがにまぁ、と笑う。
「「あはははははっ!!!!」」
「ん?んー・・・クラピカ・・・まだそれ着てんのか?」
「レオリオ!平気?大丈夫?」
「あー・・・頭クラクラする・・・」
「平気なのか!?脳震盪だったらどうする!?」
咄嗟にクラピカは手をレオリオの額に当てた。
が、ハッと我に返り一瞬で手を離す。
「バーカ・・・こんなのじゃ脳震盪になんかならねーよ」
「はぁ・・・」
「それより、夏祭りに行かねーのか?だんだん暗くなってきてるぜ?」
「「「行く!!」」」
「「わぁ―――――――!!!」」
「綺麗だね!!」
「うっわ!!うまそーなもんがいっぱいある!!」
「どうだ!すごいだろ?」
「うんっ!ね!キルア!」
「あぁ!ん?なんだあのゴムボールみたいの?」
「あれはヨーヨー釣りだな。紙がついたフックにゴムを引っ掛けて水に入ったヨーヨーを釣るんだ。やってみるか?」
「へー、おっさんの驕りだったらやってもいいぜ」
「はあっ!?んだとこのクソガキっ!つーかさっきからハゲハゲ言うな!!」
ハンゾーがキルアにヘッドロックをかます。
「いででででっ!何すんだよー!!!」
「まぁまぁ、2人とも落ち着いてー」
「落ち着いてられっかよ!」
「売られた喧嘩は買う主義だぜっ!」
とかなんとか3人が騒いでいた頃。
レオリオとクラピカは2人だけで夜店を見て回っていた。
「何故私はあのまま女性用の浴衣を着て来てしまったのだろうか・・・」
はぁ・・・、と溜め息をつくクラピカ。
「俺は似合ってると思うぜ?」
「そういう問題ではないのだよ!」
ただ・・・あの時はむきになってしまっただけなのに・・・そう、ただ・・・
「嘘付け」
「え?」
「キルアに聞いた」
「?・・・なっ!!!あっ、あれは!・・・すまない・・・」
「何で謝んだよ。俺は嬉しいんだぜ?」
「え・・・」
「・・・好きな奴がきれーなカッコして来てるのに嬉しくない訳ないだろ」
「・・・」
かあぁっと顔の熱が上がる。
きっと、耳の先まで赤くなっているのだろう。
レオリオに顔を向けられなくなってしまった。
緋の眼になるのではないかという位感情が昂ぶってきているし・・・
・・・全部レオリオのせいだからな・・・
「なぁクラピカ」
「・・・何だ」
「折角日本に来たんだし、俺達も祭りを楽しまないか?そーだ!たこ焼き食おうぜ!」
「たこ焼き・・・?溶いた小麦粉に卵をまぜ、蛸、キャベツ、ネギ、紅生姜などを加え
鉄製の型で球形に焼き上げるというアレか?」
「・・・っそういう物なのか・・・?さっき屋台から旨そうな匂いがしてたんだが・・・どうだ?」
「あれは嫌だ」
「何でだよ!」
「あれは青海苔が歯に付くから駄目なのだよ!」
「・・・それも作者の意思か?」
「そうだ・・・作者がいなければ私も食べてみたいのに!」
「大変だな・・・作者のお気に入りキャラってゆーのも・・・」
「そうなのだよ!私が女性用の浴衣を着せられているのも、気持ち悪いくらい赤面しているのも、
全て作者の意図なのだよ!」
「よしっ!今から作者の目の届かない所まで2人で逃避行だっ!!!・・・ってえ!?逃避行っ!?」
「レオリオ!お前も言わされてるぞ!」
「い、いや、俺はちょっと嬉しいが・・・」
すぱこん。
「馬鹿が!」
なんだかんだ言いながら2人は祭りの華やかな光の中に消えて行きました。めでたしめでたし。
アトガキ
ハンターワールドを裏で操る闇の帝王、眞色です。(ぉぃ
さて、季節ネタです。
私が夏祭りには色々な事情で行くことが出来なかったのでこちらで代わりに行ってもらいました。
一応ギャグ、なのでしょうか・・・?
あまり笑えませんが。
そしてそして、これでハンターの小説も10作目なんですねー。
ははは、色々なことがあったなぁ・・・(遠い目)
まぁ、これからもちょこちょこ書いていきますので楽しみにしていて下さいね。
write with 眞色