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ここは、一流株式会社ハンター商事。

毎年黒字を出し続けるノリにノっている会社なのだが、

ある一人の若くして営業部部長にまでのし上がった人物によって、業績が更に右肩上がりに上昇しつつあった。

そのOL殺しの最高の微笑みと、それとは正反対の厳しい要求から、彼はこう呼ばれた。








『殺し屋クラピカ』








company







そして、今日もまた新たに殺し屋の餌食になる新入社員がまた一人。

「初めまして。今日から営業部一課で働かせて頂くレオリオと申します。宜しくお願いします」

「営業部部長のクラピカだ。これから辛いかもしれないが、是非我が社の為に頑張ってくれたまえ」

「誠心誠意、尽くさせて頂きます」

綺麗な人だなぁ、とレオリオは思った。

はっきり言ってしまえば、彼の好みのタイプの直球ど真ん中だ。

「君のデスクはあそこだ。仕事内容は各課長に聞いてくれ」

レオリオは仕事を黙々とこなしている真面目そうな社員の間を通り抜け、デスクに着いた。

すると、隣りに座っていた恐ろしく完璧なハゲの男が「レオリオ君」と小声で話しかけてきた。

「はい?」

「俺はハンゾーというんだが・・・」

「あっハンゾー先輩、初めまして」

「あぁ、宜しくな・・・そんなことより部長には気をつけた方がいいぜ」

「部長ってクラピカ部長のことですか?」

「そうだ。あの人は社内では『殺し屋クラピカ』って有名でな・・・」

「殺し屋!?」

部屋中の人間がザッと一斉にレオリオの方を見た。

どうやら禁句だったらしい。

「馬鹿野郎っ!声がデカい!」

「あ・・・すいません・・・」

「じゃあこれだけは気をつけろ。

 レオリオ君、部長は男だと思う?女だと思う?」

「・・・女に決まってるじゃないですか」

「そう思うだろ?ところがな、部長は男なんだぜ」

「え!?」

「やっぱりわからないか。とりあえずそれだけは覚えとけ。

 俺は知らずに女だと思っていた新入社員が酷いめにあってるのを何度か見ているからな・・・」

「え?」

「レオリオくーん!」

タイミングを合わせたかのように天使のような笑みを浮かべたクラピカが話しかけてきた。

「早速だけどこの仕事の処理をやって欲しいのだよ。

 ヒソカの馬鹿がちょっとしくじってしまってね…取引先は酷いことになっているんだ。

 ちょっと行って謝ってきてほしいのだよ」

レオリオは物凄く驚いていた。

(これは新入社員がやることじゃあないだろ?かなりの大事じゃねーか。)

「まぁ気をつけて行ってくれ。向こうもかなり荒れてるからな」

と、クラピカはとびっきりの笑顔で言った。

ハンゾーが哀れみの目で見ている。

「じゃあこれが地図だ。生きて帰ってこいよ!」

レオリオは無理やり外に押し出された。

(悪魔だ・・・しくじったら殺されるな・・・)







ヒソカはその変人ぶりから新人研修時からとても有名だった。

(何があるんだ?つーか何やったんだ?)

クラピカの悪魔の笑みを思い出しながらレオリオは大通りを歩いていた。

(えーと、1の3っつーと・・・あっここだな・・・ってえ─────?!?!?!)

レオリオの前にそびえ立つのは、ハンター商事よりももっと高く、もっと巨大な、もっと悪趣味なビルだった。

レオリオは死を覚悟してその会社、「株式会社幻影」に足を踏み入れた。






「いらっしゃいませ」

黒髪で大きな眼鏡をかけた何故か掃除機を持つ受付嬢が言った。

「どちらにご用ですか?」

「ハンター商事から参りましたレオリオというものです。

先日は我が社の社員がとんだ失態をしたようで、大変失礼致しました。

本日はそのお詫びを申し上げようと参ったのですが…」

我ながら上手く言えた、とレオリオは勝手に満足する。

「ああ、ヒソカさんのことですね!わかりました。それでは社長室にご案内致します」

(いきなり社長室かよ!ヒソカ先輩本当に何やったんだ?)

とか思いながらもレオリオは受付嬢の後を黙ってついていく。






ピーンポーン。

エレベーターの階数表示が「99」を示した。

ドアが開いて、レオリオと受付嬢はふかふかの赤絨毯の上に立った。

(さすが大会社の社長だな…この絨毯もハンパじゃなく高いんだろーな…)

しばらく歩くと、鉄で出来た立派なドアがあった。

「着きました」

受付嬢はドアをノックした。

「社長、ハンター商事からレオリオ様がいらっしゃいました」

すると、随分若い声が返ってきた。

「シズク、いつも通りちょっと検査してから入れてくれ」

(検査?何だそれ?)

「それではちょっと失礼します」

いきなり掃除機を構える受付嬢シズク。

「な、何を・・・?」

「大丈夫です。命が惜しくなければ何も言わないでくださいね」

もはやレオリオに反論の余地はなかった。ある訳がない。

「銃、刃物、その他武器になりそうな物を全て吸い取れ!!」

「ギョギョギョギョッ!!」

キュイーン。

「あぁっ!!俺のネクタイピン!!うわっサングラスまでっ!!」

「まだまだありますよー、酒、煙草、麻薬、ついでに大人向けのグラビアがたくさん載ってる本も吸い取れ!」

キュイーン。

「煙草まで取られるのかよ!お、おいその雑誌は!!」

「あ、やっぱりエロ本持ってた」

「や、やっぱりって・・・

 まぁ雑誌もネクタイピンも煙草も良いけどよ、サングラスは返せよな!

 アレがないと唯一の俺のトレードマークがなくなるだろーが!!」

「無理ですよ、デメちゃんは一つ前に吸い込んだ物しか吐き出せませんから。

それにこれはボディーチェックですよ。サングラスにだって十分殺傷力はあります」

「このアマっ!!」

「まぁまぁ落ち着いて」

レオリオが声のした方を見ると、鉄のドアがいつの間にか開いていた。

「すみませんねぇ・・・でも僕が色々なところから命を狙われているのは確かなことですから。

 さぁどうぞ。お入り下さい」

「あの・・・もしかするとあなたが・・・」

「はい。株式会社幻影代表取締役のクロロ・ルシルフルですよ」

ドアの陰から出て来たのは、そうレオリオと歳も変わらない品の良さそうな青年だった。

そして。

「やあ◆」

「ヒ、ヒソカ先輩!?何でここに!?」

「君か◆営業に新しく来た新人クンって◆んー、いいね◆その初々しさ◆」

「ヒソカ、お前にはあまり顔を出さないで欲しかったんだが・・・まあこの際良いだろう。

 レオリオ君、君にはこの状況がわかりますか?」

いきなり話を振られ、レオリオは少し慌てた。

「え、えーと・・・社長とヒソカ先輩はお知り合いだったんですか?」

「んー・・・もう少し深いかな・・・?」

「友達以上恋人未満◆」

「勝手なことを言うなヒソカ。はっきり言ってしまえば・・・」





スパイ。





「え・・・嘘ですよね・・・?」

「ホント◆」

「いやーヒソカは本当に使える奴でねー、スパイには最高に適しているんだよー」

「僕普段から嘘つきだから◆」

妙に納得するレオリオ。

・・・て納得してる場合か!

「あれ?ハンター商事と株式会社幻影はちゃんとした取引をしているはず・・・

 どうしてスパイなんか送り込むんですか?」

「良い質問だ、レオリオ君。

 そもそも株式会社幻影という会社は存在しないんだ」

「さも『幻影』のようにね◆」

「え・・・じゃあ・・・?」

「ご察しの通り、糸を引いているのはスパイダーカンパニー、ハンター商事のライバル会社だ」

「マフィアじゃないよ◆全く関係ない訳じゃないけど◆」

その時。





「そこまでだ!!」



ドアを大きく蹴り開けて入ってきたのは、クラピカだった。

「部長!?」

「これはこれは」

「あ◆部長さんだ◆」

「ついに吐いたな!これでやっと復讐が果たせるぞ!」

「「「復讐?」」」

不思議な顔をする3人。

「覚えていないのなら教えてやろう・・・

 あれは4年前だ。

 愚かなことに私は悪徳業者に床下工事を依頼してしまい、300万ジェニーもボったくられてしまったのだ!!」

「まさかそれが・・・」

「そのまさかだ。その非常極まる業者の名が株式会社幻影というのだよ!!」

「クロロ・・・そんなことをしていたのかい◆」

「まあ暇潰しにやった覚えがなくもないな」

「貴様っ・・・!!」

クラピカの眼が緋色を帯びていく。

「んー◆殺し屋クラピカの本領発揮だね◆」

「五月蠅い!いくぞクロロ!」

クラピカが名刺を某カードバトル漫画のようにシャ───っときる。

「企業戦士伝統必殺技其の壱!!ネームカードストーム!!」

数え切れない程の名刺がクロロを目掛けて勢い良く飛んでいく。

しかし、クロロは少しも動じず、こう言い放った。

「代表取締役の秘技!!高級ズワイガニ召喚!!」

すると、ボンッという音と白い煙と共に、馬鹿のようにデカい

見るからに高そうなズワイガニがクロロの前に現れ、クラピカの名刺からクロロを守った。

「あれは・・・あれはアリなのか!?」

「蟹ノ助、よくやったぞ!後で食べてやるからな!」

不満気なクラピカを無視し、仲良く手と手(ハサミ?)を取り合って喜びを分かち合うクロロと蟹ノ助。

「何の!企業戦士伝統必殺技其の弐!!満員電車!!」

「!うっ・・・キツっ・・・!!」

クロロに見えない圧力がかかる。

「どうだ。いつも高級自動車で移動しているお前にはわからない苦しさだろう」

「くっ・・・!だ・・・代表取締役のっ・・・ひ・・・!!」

「技名を叫べないのならその技は使えない。少年漫画の鉄則ではないか」

「そんな鉄則ないと思うけど◆」

「黙れヒソカ。おや、レオリオ君はどこに行ったかな?」

レオリオが不安そうに社長室に入ってくる。

「ぶ、部長・・・生命の危機を感じたので廊下でシズクさんとあっち向いてホイしてました・・・」

「レオリオ君、君には今後の為に見ておいてほしいのだよ。

 いずれ企業戦士伝統必殺技の継承者になってもらうんだからな!」

「はい!・・・ってええええ!?」

「体格もいいし、何より君は我が社に誠心誠意尽くすと約束したじゃないか。断る理由はないだろう?」

レオリオは頭の中で技のアホらしさと美人(?)部長の信頼を天秤に掛けた。

もちろん、部長の信頼のほうの腕が大きく沈む。

「はいっ!も、もちろんです!」

言っちゃったねえ◆と言いたげな目でヒソカがレオリオを見てくる。

「それではとどめをさそう。

 企業戦士伝統必殺技最終奥義!!接待ゴルフ!!」

「・・・せ、接待?」

「うわ・・・っその技だけは・・・」

「7番クラブ用意!!」

クラピカの手には何時の間にか特大ゴルフクラブが。

「え!?部長!もしかして!!」

「三○――住○―――――○ザカード!!」

クラピカが大きくスイング。

「グヴぁっ!!!」

クロロはボールとなって99階の窓を突き破りどこかに飛ばされた。

「ナイススイング◆」

「ヒソカっ!!!お前もだ!!」

「僕はバンジ―ガムがあるからあんまり意味がないと思うよ◆」

「この下衆めっっ!!!」

「こういう時は・・・逃げよっと◆」

急いで走り去るヒソカ。

「あ、私も」

シズクもヒソカの後を追う。

「待て――――!!!!!!!」

そしてその後を追うクラピカ。

後に残されたのはレオリオ一人。

「え、えーと・・・俺がシメなきゃいけないのか・・・?

 ん――――・・・・・今日もよく労働しました」









ちゃんちゃん。











アトガキ




つ、疲れた・・・。

あぁ・・・こんなに壊れたのは初めてですね・・・。

すいません。レオクラなんかもうほったらかしでした。



そういえば旅団初登場です。

みんな壊れてます。はい。

こんどはこれと正反対のドシリアスでも書いてみようかなぁ・・・(笑)

あ、ヒソカの語尾の『◆』。これは他のハートやスペードマークが

どう出すのかわからなかったので全てダイヤになってます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。








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