calling







空を灰色の雲が埋め尽くし、ぴたぴたと雨が降り注いでいる。

そのせいか、時折遠雷の音がするくらいで、騒がしさなどどこにも存在しない。

いつもならヒステリーを起こし喚き立てるネオンも、今日は朝早くから出かけてしまっている。

クラピカはこの静寂に少し感謝してひさしぶりに読書に励んでいた。

何しろ最近は本を開く時間など皆無で、そのため苛つきさえ覚えていたのだから。

部屋にはさり、とページをめくる音が響く。

遠雷の悲鳴が微かに聞こえる。








それと全く同じ時刻、クロロ・ルシルフルは真っ暗な部屋の中で雷の眩光を頼りに読書に励んでいた。

一時間程前から停電になってしまい、蝋燭もランプも見付からず、

しようもなく窓際に座って本を読み始めたのだが、

この状況は意外にも快適で、彼の本が怪奇小説だったこともあり最高のシチュエーションであった。

閃光がクロロの顔を照らす。

凄まじい雨音を切り裂いて雷電が響いた。








クロロに鎖を刺してからかなりの時間が経つ。

クラピカはふと考えた。

彼はまだ鎖の呪縛から解き放たれていない。

しかし、私に接触しようともしてこない。

彼は何をしようとしているんだ?

今何をしているんだ?

何を思い、誰を想っているのだろうか?

あのヨークシンの夜から、クロロの姿が脳裏に焼き付いて離れない。

暗く深い瞳。

刻まれた十字。

何なのだろう、この感覚は。

耐え難い恐怖と、恋焦がれるがあまりの奇異な執着とが入り交じったような。

遠雷の音が聞こえる。

何処かで彼も雷の声を聞いているのだろうか。








光が放たれるのと、音が吐き出されるのにほとんど時間差がなくなってきた。

雨はますます激しくなり、窓を打つ音は喧しいとすら感じられるようになった。

クロロの読む小説の中では今正にヒロインが悍ましさに悲鳴を上げているところである。




『人間は強く冷酷で奇妙で美しい者に惹かれる』




ある本の一節を思い出す。

雷は正にそうだ。

猛々しい自然界の強さ、一分の容赦もない冷酷さ、神秘故の奇妙さ、そして、暗闇を照らす美しさ。

自分はどうもその手のものに少なからず興味と好意を抱いてしまうらしい。

ああ、そうだった。

奴もだ。

今まで俺に向かって来た者達の中で、最も思慮深く、興味をそそられた奴。

互いに捕えあう好敵手。

現に、今俺の命は奴の手の中である。

しかし、絶体絶命であるにも拘らず高揚感を感じるのは、単に俺が戦闘好きだからという訳ではないだろう。

あいつが最高の相手だからこそだ。

この空の下、あいつも俺を求めて暗躍していることだろう。

何処までも逃げてやる。そして背後に回って先に手をかけてやろう。

蜘蛛の頭が千切れる前に。








雨はまだ止みそうにない。










アトガキ



クロクラ。

クロクラ・・・?

初めて書いたんですよー!

直接会うのが危険なCPってすっごい難しい・・・

レオクラみたいな阿呆な掛け合いがクロロが絡んでくると途端に出来なくなります。



一応二万打記念です。

改めて、ありがとうございました!





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