cherry




春も勢いづいてきた暖かいある日。

仕事を終え部屋に帰ると、久しぶりに小包が届いていた。

差出人の欄を見てみると、「レオリオ」とある。

レオリオが何か送ってくることはそう珍しいことではない。

いつも何かと気に掛けてレトルトや真空パックの食料を送ってくるのだ。

いくら保存料や食品添加物が大量に含まれていることを繰り返しても

構わず送ってくるので少しずつ消費しているのだが。

遅くに帰ってきた時などには意外と役に立っている。

さて、今日は何なのだろうか。

段ボールを開けると、いつもなら見えるはずの無機質なビニールではなく、

赤い小さな粒が綺麗に並んでいる。

確か「さくらんぼ」というのではなかっただろうか。

甘酸っぱい香りが鼻を掠めた。

一番上にはいつものように手紙が入っていた。

だが…今日は少し違った。

女性が好みそうな桜色の美しいカード。

レオリオにしては珍しい。

いつもはノートの切れ端のような物に走り書きで二言三言書いてあるだけなのに。

カードを開いて見た。



『クラピカ、誕生日おめでとう。

お前のことだから今日が自分の誕生日だってこと忘れてたんじゃねーのか?

で、このさくらんぼはお前へのプレゼントだ。

下手に物もらうより食い物のがいいだろ?

これは、「ルーメン」って名前のさくらんぼなんだ。

俺の故郷では一番一般的な種類で、あんまり甘くないのが特徴。

つまり、大人向けの味なんだ。

お前も一つ年取ったんだからこういうもんたくさん食ってみろよ。

ちなみに俺はカクテルに浮かべるのがおすすめ。

じゃあな。また何か送ってやるよ。

レオリオ



追伸

お前俺の誕生日忘れてただろ?

3月3日だぜ?覚えとけよ。』



そういえば、今日は私の誕生日だった。

レオリオの言う通り、すっかり忘れていた。

そして、彼の誕生日も。

悪いことをしてしまった。

さくらんぼに手を伸ばす。

本当ならカクテルに浮かべて一杯飲みたいところだが、酒には弱いので、そのまま口に運ぶ。

酸味が口中に広がる。

甘ったるくない、自然な味。

これが大人の味?

解らない。私には。

噛みしめた甘酸っぱい果肉は答えずにとろけて消えた。





アトガキ


クラピカBIRTHDAY記念小説です☆

レオリオの誕生日に何も出来なかったので「クラピカが忘れていた」という設定で。

ちょっと無理がありますが気にせず「こんなもんだ!」と読んで頂ければ幸いです。





write with 眞色