私は上手く笑えていますか?

あなたは大丈夫って言ってくれますか?



connection


RRRRRRR…

RRRRRRR…

携帯電話が着信を知らせる音を告げた。

もともと電話はあまり好きではなかった。

番号を教えていたのもほんの少しだったので、かかってくる電話は仕事の連絡が殆どだった。

(ボスか…?)

クラピカは携帯電話を取り出した。

『発信者…レオリオ』

(レオリオ?!)

慌てて通話ボタンを押す。

「…もしもし」

『よっクラピカ!久しぶりだな!』

「レオリオ…急に何の用だ?」

『なんだよーせっかく電話してやったのに不愛想だなー。

ほら、もうすぐ9月1日だろ?どこで会うかとか決めとこうと思ってな。

ゴンとキルアはすぐに連絡取れたんだが、お前はなかなか捕まんなかったんだ。忙しかったか?』

たしかにここしばらくはとても忙しかった。

電話がかかってきても気付いていなかったのだろう。

「ああ、雇い主が見つかってから仕事が続いていてな。電話に出ている暇もなかった」

『そうか…それでいつごろヨークシンに来るんだ?

俺は1日の午後になりそうだ。ゴンとキルアは8月の終わりには行くらしいぜ』

「済まないレオリオ…まだボスの予定がわからなくて…」

どうせ買い物したいーとかカジノ行きたいーとか言うんだろう、と思いながらクラピカは言った。

『そうか…じゃあ予定がわかったら教えてくれよ。

メールでもなんでもいい。それくらいの時間はあるだろ?』

「わかった。わかり次第連絡をいれることにする。じゃあ───」

『クラピカ』

折角切ろうとしたのにタイミングを逃してしまった。

こっちは長電話してる程暇ではない。

「…なんだ」

『お前さー、最近疲れてないか?』

「…いや別にそんなことはない」

『隠すことはないんだぜ?あと寝不足だろ。それに体のどっかが凝ってたりしてないか?』

「…」

『図星だろ?』

「何故わかった」

『俺はこれでも医者志望の端くれでよ、声を聞いただけでも意外と症状なんて分かるもんなんだぜ。

お前の症状は典型的な過労だ。前に比べて声がかなり低いしな」

ひょっとしてこの男は声から症状がわかる念でも取得したのだろうか…?

『俺が近くにいたら幾らでも色々診てやれるんだけどなぁ…』

「レオリオ、念は使えるのか?」

『ん?あぁ、「ネン」のことか───まぁ基礎だけな』

それならレオリオは元々の自分の能力で今の診断を下したことになる。

「お前は馬鹿なんだか才能があるのかよく分からないな…」

『あ!今お前ちゃっかり俺のこと貶しただろ!』

「別にそんなことはしていないのだよ…」

『ごまかすなっ!!』

「ふふ…どうしてお前はそうすぐ突っかかってくるんだ?」

『クラピカらしいな、そういう理屈っぽい所』



こんな風に自然に笑ったのは何カ月ぶりだろうか。

しばらくこんな感覚は忘れていたことに気付く。

レオリオといると自分に素直になれる。

ゴンよりも、キルアよりも、ずっとずっと。

まるで昔からの幼なじみのように。



「レオリオ…」

『なんだよ?』

「…会いたい…」

『おっおいっ、何急に言ってんだよっ!』

「会って色々なことを話したいんだ…」

何時になく素直なクラピカ。

当然の様にレオリオは(可愛いっ!!)と思ってしまう。

『お、お前性格変わってるぞっ!

いつものクラピカらしくないっつーかっ!(そこがまた良いんだが)』

レオリオは完璧に動揺しまくっていた。

「レオリオ…」

『はいぃぃっ!!』

「私がハンター試験の時から大分変わっていても気にするなよ」

(大分っ!?性格かっ!?それとも体型かっ!?性別も変わってたりして!?)

レオリオの頭の中で色々なクラピカが駆け巡った。

もちろん性別が変わることはまず無い。

『っ…また電話してもいいか?』

レオリオは胸の鼓動に負けないようになんとかそう言った。

「ああ、構わない。私がちゃんと出ることができる確率は低いと思うが」

『それでも良いんだ。話せなくったってそれだけでお前と繋がってる気がするから…

…9月1日にまた会おうぜっ!じゃあなっ!』





ツーツーツー…


(いきなり切って…中途半端な奴だな…)

クラピカも相当動揺していたのだが、彼なりに抑えていた。

(『繋がっている』か…悪くないな…)



いつの間にか雨が降り出していた

音も無く、青々と茂る木々を濡らしていく

空は明るく、屋根から落ちる雫はきらきらと輝く



(あー、あんなキザったらしいこと言ったの初めてだぜ)

レオリオは自分で言った言葉に自分で照れ、あわてて電話を切っていた。

(でも、悪くなかったな…クラピカもあんなこと言ってきたしなぁ…)

クラピカがどんな風に変わったのか妄想を膨らますレオリオだった。



雨は静かに街を包み

乾いた地表に潤いを与えた

葉月はそろそろ旅立つだろう

波乱の長月 眠りの淵へ





theme music : 鬼束ちひろ 『眩暈』






アトガキ


シリアスなんだかなんなんだか…ごちゃごちゃです。

最後の方の詩はネオンの占いっぽくしてみました。

それと、クラピカは威圧感が増しただけです。(コミックス11巻187ページ参照)

…大げさですね。はい。

そしてそして、この『眩暈』という曲なのですが。

正にクラピカのことを歌っているとしか考えられません。

歌詞を見てみましょう。嫌でもクラピカが浮かんでくるはずです。

あ、『connection』は『接続』という意味です。

本当にこの無駄なタイトル揃えはもうネタがないので次からは多分普通のタイトルで行きます。

最後まで読んで頂き有り難う御座いました。




write with 眞色