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パドキア共和国のククル―マウンテンの麓の街。

ゴンとキルアが天空闘技場に向けて旅立った後のこと。





「クラピカ」

「なんだ、レオリオ」

「お前はこの後すぐに雇い主探しとやらに行っちまうのか?」

「当たり前だ。なるべく早く全ての眼を取り返したいんだ。

このコーヒーを飲み終わったらすぐに飛行船のチケットをとるつもりだが」

「なぁクラピカ、今日1日だけ俺に付き合ってくれないか?

街を歩いたり、買い物したりするだけなんだが──いいか?」

別に一日位どうってことはない。息抜きがあってもいいだろう。

「わかった。そのかわり明日朝一番の飛行船で出発するからな」

「了解。じゃあ行くぞ」

その後、レオリオはクラピカを色々な店に連れ回した。

その中の一つ、宝飾品店で、レオリオはネクタイピンを見てくると言って

少し離れた売場に行ってしまった。

クラピカは宝石売場をぼんやりと眺めていた。

すると、目に鮮やかな緋の輝きが飛び込んできた。

それはショーケースの中のピンポン玉より少し小さい位の丸い宝石だった。

キャッツアイという種類だ。

「キャッツアイ…」

緋色のそれはクルタ族の眼球に酷似していた。

クラピカは値札を見た。決して安くはなかった。

「クラピカ?」

いつの間にかレオリオが横にいた。

「ネクタイピンがバカ高いから店員に値切ってくる。お前、ちょっと外に出ててくれないか?

時間かかりそうだから他の店行っててもいいぞ」

「わかった、向かいの本屋にいるからな」

レオリオはその言葉を聞くとすぐに店のカウンターに走っていった。

店を出ていくクラピカの耳にレオリオの大声が聞こえてくる。

子供だな、と思う。

レオリオは2つも年上なのに自分より短気だし、感情が表に出やすいし…

でも嫌いになれなかった。

元々どちらも友達になんかなれなさそうな性格だったのだが…

あの船の上でゴンがいなかったら今もいがみ合ったままのはずだ。

「全てゴンのおかげ…か」

思わず口に出してしまった。





『友達』

クラピカには幻影旅団に襲われてからはあまり馴染みのない言葉だった。

この4年間、1人で生き抜いてきたクラピカは、

無意識の内に友達を失うことを恐れて他人との関わりを絶っていたのかもしれない。





クラピカがたどり着いた先は本屋ではなく、

宝飾品店の前にレオリオと立ち寄った紳士服店だった。

レオリオは「大したもんはねぇ」とすぐに出ていってしまったのだが、

棚の端にクラピカはとてもレオリオに似合いそうな物を見つけていた。

それは、深い群青色で、薄く白い斜線が何本か入っているネクタイだった。
見た瞬間にレオリオを思いださせた。

クラピカは迷わずそれを買い、急いで本屋に向かった。

地図を広げて明日向かう目的地を探そうと思ったのだが、

クラピカの頭はどうやってこのネクタイを渡そうか必死で考えていた。

誕生日はいつだか知らないし、何かの記念でも──

記念?

そうか!ハンター試験合格祝として渡せばいいのか!それなら──

「クラピカ」

「?!」レオリオがいきなり声をかけてきた。

「地図なんか見てんのか?」

「あ、ああ…明日の目的地を探そうと思っていたのだよ…」

「そうか…そんなことよりこれ見てくれよ。

さっき買ったネクタイピンなんだが、ねばったら3割引にしてくれたんだ。

いい買い物したと思わねーか?」

クラピカはレオリオの胸元をちらっと見てみた。

銀にほんの少しだけ模様が彫ってあるシンプルなデザインだ。

「ああ、とてもよく似合っているよ」

クラピカは心からそう言った。

二人は夕食を食べてからホテルに向かった。

フロントでハンター許可証を見せるとすぐに最上階のスイートルームを用意してくれた。

「許可証の威力はホントにすげーな」

「ハンター達は様々な偉業を成し遂げているからな。それだけに待遇も素晴らしいものなのだよ」

「そういや講習でそんなこと言ってたなー。なんかまだハンターになったのが嘘みたいだぜ」

「本当にそうだな。でもハンターになっただけでは意味がないからな。大切なのはこれからなのだよ」

「ああ。そうだクラピカ、実はお前にプレゼントがあるんだ。ハンター試験合格祝ってことで」

レオリオも何か買っていたのか?!

「ちょっと待ってろよ…あったあった、お前あの店でずっとコレ見てただろ?」

滑らかな革の袋に入っているそれはさわるとピンポン玉位で少し重みがあった。

これはもしや…!!

「本当はそんなもん買っていいのか迷ったんだ。

お前がそれを見て辛くなったりしたらって思うとな…

でもこれは宝石だ。眼じゃあない。代りとまではいかないが、持っていて損はないと思うぜ」

クラピカは改めて宝石を見てみた。

曇り一つない緋色のキャッツアイ。

じっと見ていても怒りは沸かず、むしろ心が落ち着いてくる。

「ありがとうレオリオ…でも安くなかっただろう?」

「値段なんて関係ねーだろ。俺が買ってやりたいと思ったんだ。

それにクラピカには何の負担もなかったんだからいいだろ」

「レオリオ…」

「安心して持ってろ。代金取り立てなんてことしないから」

クラピカは相当驚いていた。

ここまでレオリオが自分のことを想ってくれていたとは。

「レオリオ、私からもプレゼントがあるのだよ。キャッツアイほど値の張った物ではないのだが…」

そう言ってクラピカは昼間買ったネクタイを出した。

レオリオはとても気に入ってくれた。

「クラピカと会う時は絶対にこれをする」とまで言った。

「おっと、もう日付変わってるぜ。お前朝一の飛行船に乗るんだろ?」

「…8時の便だ」

「じゃあもうそろそろ寝た方がいいだろ」

「…ああ…おやすみ、レオリオ」

「おやすみクラピカ」





二人がベッドに入ると「群青と緋色か…正反対だな」とレオリオが言った。

それが独り言だったのか、それともクラピカに呼びかけていたのかは誰にもわからない。





朝、クラピカが目を覚ますと、

今まで絶対に起こされるまで起きなかったレオリオが珍しく起きていた。

「おう、おはようクラピカ」

「おはようレオリオ…やけに早いんだな…」

「たまたま早く目が覚めちまってな。お前も早く着替えた方がいいぞ。朝メシ食べれなくなる」

「レオリオ、それは…?」

「あ?」

レオリオはしっかりクラピカがあげた群青色のネクタイを付けて、

昨日自分で買った銀のネクタイピンを留めていた。

「もらった物は有効活用しないとな。それにクラピカと会う時はコレって決めたしな」

「そうか…私も宝石を肌身離さず持ち歩くことにするよ」

二人は朝食をとって空港に向かった。

『間もなくHAL17便8時発ルミデルト行きの搭乗手続きを開始いたします。

御搭乗されるお客様は4番ゲートまでお越しください───』



「レオリオ、短い間だったが一緒に過ごせて楽しかった」

「俺も楽しかった。付き合わせて悪かったな」

「そんなことはない。久しぶりに心から楽しめた。礼を言う」

「やっぱりお前は堅っ苦しいな」

「?!」

「まぁ俺はクラピカのそういう所好きだぜ」

「///公衆の面前で軽々しくそんなことを言うなっ」

「わかったわかった。じゃあ9月1日にヨークシンで会おうぜ」

「じゃあまた」

クラピカは搭乗口に歩いていく。

ふと振り返るとレオリオが手を振っていた。

クラピカは軽く手を振って飛行船に向かって歩いていった。





飛行船に乗ったあと、クラピカはレオリオの誕生日を聞かなかったことをとても後悔しました(笑)










アトガキ



訳もわからず書いた初作品です。

こんな駄文を最後まで読んでいただきありがとうございました。

果たして大丈夫なのでしょうか…???

良ければ感想をお願いします。







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