「今日クリスマスだって」



「ふん・・・そんな行事もあったな」







carol







「キリストの誕生日か。下らねえ」

「団長もきとそう言うね」

「・・・ああ」



それきり静まり返るアジト。

外の寒気がむき出しのコンクリートの壁を伝って部屋に音もなく侵入してくる。

いくら悪名高き盗賊団、幻影旅団でも、それを止めることは出来ない。



「・・・寒いね」

「そんな分かりきったこと言うな。冬なんだから当たり前だろ」

「ううん」

シズクは左胸に手を当てた。

「ここが、だよ」





一瞬の沈黙。

が、すぐに、

「いつからお前はロマンチストな吟遊詩人になったんだ?」

というノブナガの皮肉を込めた声が聞こえてきた。

「でも・・・わかるでしょ?」

「つまり」

シャルナークが間に入ってくる。

「世の人間達は楽しそうに街を歩いたり、プレゼントをもらったりしている。

 でも俺達にはそういった楽しい記憶がない、といった感じ?」

「クサく言えばそんな感じ」

「懐かしいな。クリスマスは食料と物資の仕入れ時だったな」

「嫌でもケーキが食べれたしね」

「僕は」

カルトの声。

「ん?」

「僕は・・・パーティーしたことある」

「あー、お前の家ならあるかもな」

「相当金かかってたんじゃない?」

「別に。食べ物が沢山出たけど」

「いい暮らしなもんだぜ。さすが暗殺一家」

「全部ロシアンルーレット式だよ。誰かの料理に間違いなく毒が盛られてた」

「・・・シビアだな」

「大体みんな気付くけど、もし当たったらプレゼントが貰えなかったから必死だったよ」

「貰えるだけまだマシ。ワタシもらたことないよ」

「俺もない」

「私も。気付いたら貰う前に奪ってた」



苦笑。



「物をあげたこともないしな。欲しい物は奪えば手に入る」

「いや──────あるな。手に入らない物」

ノブナガが噛み締めるように言葉を発する。

「団長、だろ?」

馬鹿、と小さく悪態を吐くノブナガ。

「ウヴォーとパク。

 団長は手に入る入らないの問題じゃねえ。間違いなく『帰って来る』」

「しょうがないんだ。

 いくら念能力に長けていても、死人をそのまま生き返らせるなんてことは出来ないんだから」

「それ位わかってる。だから、手に入ら────いや、物じゃねえから違うな。

 『帰って来れない』んだ・・・」







2度目の小さな静寂。





「くそ・・・鎖野郎め・・・」

「ノブナガ、抑えて」

「いいよ。みんな本当はそう思ってるんだから」

「ああ」



「みんな、ありがとうな」









永久の夜に映る貴方

その背中に背負う逆十字と鎖の枷はとても重そうで

雪の中を進む貴方の足跡さえも痛々しく感じられた

貴方の行き先は

多分降り敷く氷の粒も知らないが

私は復活祭が演じられるまで

この旋律をせめてもの餞として贈ろう









go carolling,go carolling









thema music : L'Arc~en~Ciel 「花葬」















アトガキ

宣言通り、旅団シリアスです。

前作とのテンションが全然違いますね・・・

初旅団モノでしたが、これは書いてる途中自分でもマズイと思ったのですが、

どの台詞が誰のなのかわからない!!

みんな一人称被ってるし、口調さえも被っている人がいるし、

喋ってない団員も何人かいるハズです・・・

でも書くのはとても楽しかったです!

それでは、最後まで読んでくれた貴方に素敵なクリスマスが訪れますように。












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