安部邸、晴明の私室。
夜警に出た孫のために離魂術を用いた主の体の側に寄り添う二人の神将がいた。
「晴明様、遅いわね・・・」
心配そうに呟くのは、長い銀髪と深い翠の瞳を持つ穏やかそうな女性。
主の体の横に座した天后は、憂いに澄んだ眼差しを曇らせた。
「どうせあの馬鹿のことだ。真剣に考えるだけ時間の無駄と思うべきだろう」
きっぱりと言ってのけたのは、青い髪を括った鋭い目つきの青年。
柱に背を預けて腕を組んだ青龍だった。
「それはそうだけど・・・でも、青龍だって心配なんでしょう?
いつもより眉間の皺が多いもの」
そう言って、控えめに苦笑しながら天后は気難しい同胞の額を指差した。
確かに、天后の指摘は正しかった。
しかし、その違いは微々たるもので、よく見ていないと気がつかない。
「・・・何故、そんなところまで見ている?」
訝しげに問う青龍の眉間に、また一本皺が増える。
それを見てもう一度天后は淡く笑む。
「・・・・・・秘密」
ほんのり頬を染めて小首を傾げた天后の姿が、青龍の深い蒼の眼に映る。
その笑顔から顔を背けて、青龍は低く呟いた。
「まったく・・・。性質の悪い女め・・・」
だからこそ、目が離せない。愛おしい存在―――。
あとがき
比較的この二人で留守番をしてることが多いようなので、妄想してみました。
この二人はお互いなんとなく解ってるんだけど、敢えて言わないでいる、
みたいな関係のイメージが私的には定着してます。
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