俺は今日、男になる。
そう、天一にプロポーズするのだ!
たった一つの誤算
「いらっしゃいませー」
店内を見回して、以前から目を付けていた物を探す。
ショーケースに入った指輪を見つけ、店員を呼ぶ。
値段も見ずに、カードで支払いを済ませると、ダッシュで店を出た。
全速力で通りを抜け、待ち合わせ場所へ走る。
「愛しの天一よ、ついにこの日が・・・!」
思えば、俺が天一に出会って五年。随分と長かった。
俺が高校二年(一回目)の時、天一がうちの学校に就職したのが、そもそもの始まりだった。
一目見て、その女神のような姿に恋をした俺は、丸一年をかけて、天一を口説いた。
その後、天一と離れるのが惜しくなり、四回の留年を経て、今に至る。
結婚すれば、家で天一と一緒に居られるから、安心して進級できる。
そう考えた俺は、二ヶ月前から計画を練り、クリスマスの今日、実行に移した。
指輪は買った、服装もバッチリ、雰囲気はクリスマスで最高潮!
こんな俺に死角はない!
思わずこぼれそうになる笑みを抑え、指輪の入った箱を握る。
「うおおぉぉぉ!!」
もうもうと土煙を上げ、俺は街道を爆走していった。
待ち合わせしていたオープンカフェに着くと、一番奥の席に、天一が座っていた。
「天一,待ったか?」
「いいえ、今来たばかりよ」
漫画でよくあるやりとりを交わして、天一の正面の席に腰を下ろす。
今日の天一は、丸首のブラウスに、ベージュのロングスカート。
ファー付きのジャケット姿は、天使そのものだ。
肩から流れ落ちる金髪が、いつもより美しく見えるのは、俺の目の錯覚では無いだろう。(←多分いつも通り
穏やかな眼差しに見つめられれば、ノックアウト寸前だ。
適当に注文をして、他愛もない会話をする。
こんな時間も、俺にとっては至福の一時だ。
談笑している内に、注文の品が来た。
それを食べながら、学校の話題などで盛り上がる。
そんなことをしていると、いつの間にか一時間が過ぎ、辺りも薄暗くなってきた。
突如、周りが明るくなり、他の客達がざわつく。
ライトアップが始まったのだ。
「きれい・・・」
突然のことに驚きつつも、幻想的な光に、天一は喜んでいる。
光の演出のおかげで、周りのカップル達は、皆いいムードになっている。
否応なしに、店内には、甘い空気が満ちてきた。
プロポーズするのに、これ以上のチャンスはない。
行け、俺!
「・・・天一,お前とつきあい始めて、もう四年だな」
「・・・?ええ、そうね」
俺の意図が読めない天一は、少々戸惑っているようだ。
「俺達は、この四年間で、十二分に絆を深め、愛を確かめ合った」
薄々、何を言おうとしているのか察した天一は、顔に驚きの色を浮かべる。
「そこで・・・俺と結婚してくれないか?」
言った・・・。ついに言ったぞ、俺!!
心臓の音が、やけに大きく聞こえる。
血液の流れが、手に取るように分かる。
大分考えた後、天一の唇が動いた。
「・・・はい、喜んで」
俺はその場で、盛大にガッツポーズを決めた。
できるものなら、町中に号外を配りたい。
「ただし」
俺の周りを飛んでいた羽つき小便小僧(要するに天使のことだ)を消して、天一が続ける。
「朱雀が立派な社会人になったらね」
「ぐはぁっ!」
しまった・・・一つだけ、重要なことを忘れていた・・・。
天一は、清らかで真面目なのだ。
学生結婚など、許すはずがない。
危うく俺は、その場で血を吐いて倒れそうになった。
何故なら、それでは問題が解決しないからだ。
それでは、天一と何年も離ればなれになってしまう。
大学を卒業して、就職先で、それ相応の地位に着くには、何年もかかる。
かといって、高卒でアルバイトでは、収入が・・・。
あーでもない、こーでもない、と思案に暮れる俺を、他の客が、変な目で見ていたというのを、俺は知らない。
どっちにしろ、今すぐ天一と結婚できないと知り、ヤケになった俺は、大音量で叫んだ。
「くっそー、サンタのばっかやろー!!」
後で気づいたのだが、俺も安倍陰陽学院に就職すれば良かったのだ。
あとがき
はい、朱雀が最強のアホと化しております。
というか、これがクリスマス小説だというのだから、かなり笑えますね。
・・・ええ、誰がなんと言おうと、クリスマス小説です。
勿論、サンタには一切罪はありません。
多分、この後うまくいったと思います・・・多分。
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